Aizen

月光

 江戸から少し離れた場所にある大きな川に浮かぶ一隻の船。その中にある月明かりに照らされた一室に重なる二つの人影があった。今の今まで合わせていた唇を離して、銀時は高杉に正面からもたれかかって目を閉じた。銀時の持つ銀色の髪が月明かりに反射してきらきらと光っている。
「……なあ、」
 何かを言いかけてやはり言うのを諦めたのか、銀時は軽く唇を噛んで高杉の着物の裾を握り締めた。 高杉はそんな銀時の様子を見て彼が言いたい事が分かったのか、銀時をそっと抱き締めてその頭を一撫でしてから口を開いた。
「会いに行ってやるよ、手前の誕生日にもな」
 その言葉にはっと閉じていた目を開けて頭を上げた銀時は、ほんの僅かその赤い瞳を揺らして呟いた。
「……土産ぐれェ持って来いよ」
「ああ」
「たまには連絡よこせよ……?」
「ああ」
「…………」
「どうした?」
 急に口を閉ざした銀時に疑問を抱いた高杉は、そっと銀時を見やる。銀時は少し俯いて躊躇いを見せたあと、高杉を見上げて言った。
「……死ぬ、なよ」
「……俺はそう簡単に死なねェよ」
 そう答えて再び銀時に触れるだけのキスをした高杉は、彼を強く抱き締めてその耳元で囁いた。
「好きだ、銀時ィ」
「……俺も」
 その言葉を聞いて、高杉は腕の中の銀色を部屋に差し込む月明かりの中にゆっくりと押し倒した。

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